市ヶ谷から:保田與重郎『冰魂記』
祖母に伴って保田先生を京都鳴滝のお宅に訪ねたことがあるのでこの本を手に取り懐かしかった。先生は気むずかしい伯父さんといった風体で近づきがたかったが細身の奥さまはとてもきれいでやさしくなんかおふたりの組み合わせに違和感を感じたことを思い出した。河井寛次郎の陶器が居間のそこかしこに置かれていた。
市ヶ谷の家に保田先生の本は多数残されていたが『冰魂記』というタイトルに惹かれて持ち帰った。前見返しには直筆で『冰魂』裏見返しには何やら書かれているが読めない。内容は戦後30年の間に書かれたエッセイだった。中でも私が興味を持ったのは「三島由紀夫の死」という作品。あのときのことは近くにいたと言うこともあって私もはっきり覚えている。保田先生は学習院の学生だった頃の三島とも交流があってその死を悲しんでいらっしゃった。
肝心の『冰魂記』のタイトルの意味はわからなかった。35のエッセイが入っているのだけれどかなしいかな私は集中して読み切ることが出来ず字面を目が追っていても頭の中は違うことを考えたりしまだ半分くらいしか読めてない。
今までこんなに実がなった柿の木見たことなかった。
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